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江刺昭子「樺美智子 聖少女伝説」

2010. . 02
                                   kanba1.jpg   

 「最後に」

誰かが私を笑っている
こっちでも向うでも
私をあざ笑っている
でもかまわないさ
私は自分の道を行く

笑っている連中もやはり
各々の道を行くだろう
よく云うじゃないか
「最後に笑うものが
最もよく笑うものだ」と

でも私は
いつまでも笑わないだろう
いつまでも笑えないだろう
それでいいのだ

ただ許されるものなら
最後に
人知れず ほほえみたいものだ

 
 今月、もうすぐ50年目の6.15を迎える。およそ日本で反戦運動や新左翼運動に関わった人間で、樺美智子さんの名を知らない人間はいないだろう。またその名を知るほとんどの人は、彼女の遺稿集「人しれず微笑まん」を読んだであろう。そしてお母さん、樺光子さんのあいさつをどこかの集会で聞いているだろう。僕もその一人である。
 
 著者がこの本のはじめから語っているように、その後、運動の中で命を落とした人は多い。だが彼女ほど「神話化」された人もいない。まさに「聖少女伝説」である。一昨年12月、僕は安保ブンド結成50周年記念集会に参加したが、その時ブログに記したとおり、演壇向かって左に11.27に国会構内に入った紫紺の全学連旗、中央に共産主義者同盟の赤旗、そしてその上に島成郎、唐牛健太郎とともに、樺美智子さんの遺影がきっちりと飾られていたものだ。
 
 著者が好意的に書いている通り、「神話化」されたということのなかには多くの誤解もある。そもそも、22歳6ヶ月の彼女は「少女」ではない。そして折に触れ、お母さんの光子さんが謙虚に語ったような「平凡な」娘でもない。当時の時代を考えれば、女子が大学へ、それも東大へ入っているというだけでも「非凡」な女性である。両親も豊かでインテリである。そして、早くから「反戦平和」と「民主主義」を志向し、20歳の誕生日に共産党に入党し、その後、駒場時代に仲間とともにブント(共産主義者同盟)に結成時から参加し、本郷でも細胞の中心的人物として公安にもマークされ、1.16羽田闘争で逮捕され、釈放されてすぐ戦列に復帰するのだから、もちろん「普通の女子学生」でもなく、はっきりした政治意思を持ったブントの幹部活動家だったといえるだろう。
 それでも、彼女がこれほど「純粋な少女」として「神話化」されるのは、彼女の遺稿集の文章や、実際に彼女に触れた人々の回想に示されるように、その豊かな知性、論理的な思考力、そして何より運動へのひたむきな情熱が、やはり人を感動させるからだろう。

                                     Dscfanp500331.jpg

 僕の高校時代、社研の部室では、三一新書の「人しれず微笑まん」は、いくつもの傍線が引かれ、何人にも学年を継いで廻し読みされていた。上の学年にはこの一冊で活動家になったものもいたという。

 著者は本当に丁寧に、好意的に、彼女を知る人や関係者へのインタビューをとり、当時の時代背景も描写し、樺さんの実像と60年安保闘争の実態を浮かび上がらせる。
 特に後半しっかりと描かれているのは、彼女が「神話化」されてゆくのが、結局彼女が政治的プロパガンダに利用されてゆくのと重なっていったところである。彼女を含めた全学連の行動をさんざん罵倒しておきながら、「国民葬」を組織した国民会議、そしてまたその葬儀やそれに続く様々な機会に、気恥ずかしくなるような弔いの詩や歌を捧げたり発表したりした「進歩的」知識人たち。こうした欺瞞に満ちた構図は後々まで続く。想像するに、樺さんもご家族も随分と迷惑だったことだろう。
 そして、当時のブントもまた、良くも悪くもそうした戦後左翼の最左派として闘い敗れていったことになる。
 
 ただ、いずれにせよ、僕も何度か書いてきたが、60年安保ブントに及ぶだけの運動を、その後の新左翼も創り上げることは出来なかった。先の50周年記念集会で、この本にも登場する長崎浩は「60年安保闘争は革命であった」と言い切った。よく言われることだが、1次ブントと2次ブントとでは、指導者、活動家の質・量ともに大変な差があるようだ。僕もまた「神話」に浸リ過ぎているのだろうか。樺さんのような活動家ももう現れることは無かったしこれからも無いと思う。



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