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ギリシャ・ゼネストへ

2010. . 19

 誕生日を過ぎた。いよいよ60に近くなってきたのでその後の人生を考えることも多くなった。「年金定期便」などというものも送られてきた。以前にくらべればたいしたものである。僕は、転職することが多かったので、それこそ昔の「未納期間」もあるし、綺麗にまとまった表にはなっていない。しかし、ずっとそれなりの外資系の会社のマネージャーだったのでそこそこの金額を納めてきたようだ。だから60から、あるいは65から、今度はもらう側になるわけだが、どうやら人並みにはもらえそうだ。

 これが例えば払ってきた金額を考えた時、もっとずっと低いものだったら、あるいは突然、寸前に減額されたら、また支払いを遅らされたら、さぞ腹の立つことだろう。公的年金は医療保険とともに近代的国家の生活の基本である。

 さて、この2月10日、この生活の基本に、年金と給与に手をつけられようとしているギリシャの公務員がストライキに起ち上がった。75万人を擁するギリシャ公務員連合、ADEDYである。スト参加者は45万人と報道されたから相当なものである。さらに、24日には一般労働者を組織するギリシャ労働総同盟、GSEEによるゼネストも予定されている。こちらは200万人を擁する大組織だ。半数の100万人は参加するだろう。それに今回のADEDYの45万人が合流するとされているから、昨年秋に誕生したばかりの新政権を揺さぶる大きな闘いである。ギリシャ全人口(1,071万)の1割近い人々によるゼネスト決起である。
 リーダーの発言は勿論共感できるものだ。前政権の責任とはいえ、今日の財政危機を招いたのは永年にわたる企業への低利融資、減税、富裕層優遇によるものであり、そのつけを労働者にまわすのは間違いだという、しごくまっとうな主張である。だからこそ、多数の労働者の闘いへの決起をもたらしているのだ。

 

                                     

                                                 ギリシャ

                                     
 
 そもそも、今回のギリシャの財政危機が表面化したのは、前政権が金融機関とタッグを組んで隠していた財政赤字を新政権が12,7%にのぼることを明らかにしたからだ。(前政権は数字を操作し、3,7%と発表していた。)
 ウォール街に本社のある「格付け機関」はみなギリシャ国債の格付けを下げた。フィッチはギリシャの赤字はGDPの130%に及ぶと予測した。
 だいたい、2007年、2008年の例のサブプライム・ローン危機やリーマンブラザースの破綻をまったく予測できなかったこれらの「格付け機関」なるものが一国の「危機」を論じているのも不愉快だが、問題なのはその「意図」だ。これらの国家の「危機」の予測によって、当然ながらギリシャ国債の金利は上がり、(その時点で6%までといわれた。)また、このギリシャ国債を含む、というか巧みにリパッケージして販売された「デリバティヴ」、CDSは高騰したのである。さらに、銀行は国債の買い手が見つからないギリシャにさらに高い金利で金を貸すために、「ギリシャの財政危機」を煽り立てるキャンペーンまで展開したのである。
 
 主に動いたのは、つい先ごろ、国家の資金投入によって、つまり国民の税金によって破綻を免れたにもかかわらず、破格の高額ボーナスを出して批判されたゴルドマン・サックスである。ギリシャ前政権と結託して裏で動いて、国家の危機をも利用して荒稼ぎしたのだ。
 「ゴルドマン・サックスがギリシャのために引き受けた10件の債権発行のうち少なくとも6件については、目論見書にスワップ契約についての言及は無かった。同社は2002年、ギリシャがスワップ契約を通じて10億ドルの資金を調達するのを手助けしたが、EU監督当局は最近までこれについて何も承知していなかったと説明している。」(bloomberg)
 つまり、ゴルドマン・サックスはギリシャ国債を引き受け、金利スワップ等でこれをリパッケージして販売し、高騰させて売り抜き、購入した投資家がリスクを負い、ギリシャは不当な高金利でだぶついた現金を借り入れたのだ。

 演出者はゴルドマン・サックスと前政権、だまされて金を奪われたのは、一部の投資家と、なんといってもギリシャの国民である。仕掛けた投資銀行は何億ドルもの報酬を得ることが出来たはずだ。

 まったく、「そこまでやるか」であるが、本当に「何でもあり」で法の網の目をかいくぐり、経済危機によって弱っている国家、地方自治体、企業などをねらう、それが彼らの正体である。まさに、「サブプライム・ローン」、弱者の住宅ローンが返済不能になるのを見越して、組み込んだ金融商品を高い金利で売りぬいていったときと同じ手口である。

 これら、アナーキーな「新自由主義」の跋扈は、結局「市場が永遠に拡大する」ことを前提にしたただひたすらの利潤追求である。それは、なんら利潤をえていないものまでをも巻き込んだ自己破壊にまで突き進むだろう。「規制緩和」ではなく、まさに政治の力による「規制」が必要な所以である。

 
 僕は、財政赤字に苦しみ、EUと国民の板ばさみにあっているパパンドレウに同情する。だが、その新政権による財政引き締め、給与の凍結、人員削減などに抗して闘うギリシャの労働者たちを、無力ながら心から支持している。
 財政赤字を隠したのは前政権であり、危機以前にあまっていた現金を投入したのは金融機関である。パパンドレウ現政権にも、まして今回生活防衛に起ち上がった公務員・労働者にも、何の責任も無い。

 金儲けのためのギャンブルで、リスクを負うようで、実際には負っていない、儲かったら巨額のボーナス、損失が出そうになったら、税金、あるいは働く人間の減給、首切りで埋めようという、こんなことをいつまでも許すほうが間違っているのだ。
 先般のオバマの発言ではないが、この数年以上にわたる減税分、優遇分を返済させればよいのだ。

 2008年のストライキ闘争のときにも、ギリシャ労働者のスローガンには、明確に「資本主義の打倒」がかかげられた。
 今回のゼネストも、ヨーロッパ全体に、特に、EUの弱い環、「地中海クラブ」乃至はPIGSと呼ばれる、スペイン、ポルトガル、イタリーなどに影響を与えずにはおかないだろう。これらの国々も財政赤字で苦しんでいる。今回のギリシャのゼネストが成功すれば、各国政府は安易な「財政引き締め」とか労働者への増税、減給などの措置が出来なくなるはずだ。

 同時に、「経済危機」自体は、例えばギリシャが債務不履行・デフォルトともなれば、貸し込んでいるEU各国はもとより、アメリカ、日本にも影響が出るのは必須だろう。だからこそ今、EUはギリシャ救済に原則を曲げて乗り出し、世界は注目している。

 この「危機」はどうしたら乗り越えられるのか。これまでのような労働者につけをまわすだけの「引き締め」などによっては解決しない。

 「働く階級」の団結とその闘いによって、金融機関の暴走に国際的に歯止めをかけ、課税し、「金を返して」もらおう。私利私欲で金融機関と結託して税金を掠め取って荒稼ぎした政治家などは、その悪行を暴き、追及し、逮捕しよう。

 強欲な「資本主義」も決して永遠のものではない。その限界を露呈し始めた今、資本主義を救済するのでなく、資本主義を打倒するのだけが、働く階級が未来を獲得する唯一の道である。



 寒い日の続く、誕生日を迎えたこの2月、世の中の動きから眼が離せない。











 


 











 
 
 

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