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神保町のカフェで

2009. . 11

 喫茶店でコーヒーを飲むという事を、僕は高校時代に覚えた。以後、やめられない習慣である。神保町の書店、古書店を歩き、なじみの喫茶店に入り、コーヒーを注文する。買ってきたばかりの本をぱくりと開けて微笑む。本好きならたまらない至福の一時である。

 そのころは、神保町の交差点に神田日活があり、その裏に行きつけのHというジャズ喫茶があった。やがて閉店してしまった。入れ替わるように、現在まで30年ほど通っているのが、オーナーの名をとったこの写真の店である。

                    トロワバグ

 

 お馴染みだったマダムが昨年亡くなり、現在はお嬢さんが仕切っている。僕は仕事柄、全国の街に行って、よくコーヒーを飲むが、こちらで淹れてくれるコーヒーはさすがに天下一品である。いまやどこでも飲めない、ここだけの、何年か寝かせたオールドビーンズ、深煎り、ネルドリップ。海外でもこちらのコーヒーが恋しくなることがある。

 先週末、またまたここで買った本を読んでいた。

 

 「柄谷行人政治を語る」、小嵐九八朗のインタビューによる本である。

 少し前の岩波新書「世界共和国へ」で体系的・論理的に展開した内容と、60年安保以後の彼の思想形成が率直に語られていて読みやすい。

 柄谷氏は60年安保闘争後解体してしまった社学同の再建に関わり、この本でも触れられているが61年、有名な「駒場アピール」を書いた本人である。素晴らしい、深い洞察力と理論的な内容を解りやすく表現できる力を持った思想家である。彼は元社学同だがインタビューアーの小嵐氏は周知のように元解放派の活動家であった。愉快な取り合わせで内容も興味深いものになった。

 

 柄谷氏の思想的な歩みの到達点というべき、そして今回もまた彼がこのインタビューで強調してやまなかった事、それは前著で理論的に語ったことだが、「国家は、その内側からは決して揚棄されることは無い・・」という事だ。マルクスも、下部構造、経済的諸関係が変革されればいずれ国家は揚棄されると考えていたが、まさにそこに陥穽があった。また、ロシア革命後の変質、「国家社会主義」という言語矛盾としかいいようのないとんでもない体制が出来上がってしまったことも、根底にこの認識の「甘さ」があったとする。

 共同幻想としての国家は、何よりもまず、他の国家に対して国家なのである。だからその国家を揚棄するためには、国家の内側、下からでは駄目で、それらを統合しうる、「上に立つ」連合を構想しなければならない。彼はそこでマルクスからカントに、「永遠平和のために」の構想に行き着く。

 なお、今回のインタビューで彼は、日本国憲法・9条も背景にはこのカントの思想・構想があると語った。

 ついに、柄谷氏にしてここまで語ったのかという気分で、溜息をついて僕はこの本を読み終えた。

 

 彼は勿論、一般的な「護憲」論者などではない。それでも現在にあってはこういうことも主張せざるを得ない。それだけ困難な時代だということだ。

 

 少し前から、世の中が改憲論議でやかましい。安倍晋三などという、最低限の国民の審判・負託も受けずに総理になった男が、何を勘違いしたか改憲の大号令をかけたりした。安倍という男のイデオロギーは、自民党保守というより、冷戦時代の赤尾敏率いる愛国党とか、街を大きなスピーカーでがなり立てて廻る右翼のそれである。およそ、世間が多少左にふれているときは、左翼的な言説がかなり幼稚でもまかり通ったものだが、現在のように右傾化した世間にあっては、逆にとんでもなく幼稚で右翼的な言説がはびこるというわけだ。

 

 「9条の改正笑ひ言ふ議員、このチンピラに負けてたまるか」

 辺見庸氏が著書で引用した、岩田正氏の歌である。

 偏狭なチンピラたちの号令に乗ってしまうのか、少しはまっとうにものを考えようとするのか、時代はもうそこまで来ている。

 安倍「子供会」総理、福田「駄々っ子」総理、麻生「漫画」総理と3代とも選挙という国民の審判を受けていない総理を僕たちは押し付けられているのだ。安倍の「戦後レジームの解体」(何のことだ!)などというすさまじい右翼的再編の政治的流れを形成され、そこへもってきて小泉・竹中改革によって直接大きな影響を受けざるを得なかったアメリカ発のこのたびの経済不況である。

 これらに対抗すべき政治的軸も無く、経済政策・解決能力も無く、旧い自民党の最悪の部分である経世会の小沢や鳩山が野党民主党を牛耳って「政権交代」を空しく叫ぶ。自民党も民主党も、若手はそれこそ「チンピラ」ばかりが眼につく。

 

 嫌な時代になってしまったものだ。

 カフェでの、のんびりした読書のはずが、あれやこれや考えをめぐらす結果になってしまった。これも仕方ない。時代というものなのだろう。なかなかのんびりさせてくれない。

 

 

 

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