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ジョン・ル・カレと佐藤賢一

2008. . 12

 実はもともとこのブログをはじめる動機のひとつに、好きな本を読んで感想など書いてみたいという事があった。本と映画と音楽、あるいは服や靴のことまで書いて、自分の趣味の活きたブログを作りたかったのだ。だが、世の中の動きが激しく、大不況に入り、また政治家があまりにも次々と話題を提供してくれるので色々そちらの方に話題が偏ってしまった。もちろん僕は読書を続けている。色々な本をとにかく読んでいる。最近の気に入った本を2つ(といってもどちらも2巻)。

 

 「サラマンダーは炎のなかに」 ジョン・ル・カレ

 さすがに面白い。登場人物の背景とその描写が深いあたり、相変わらずのル・カレである。また、イラク戦争にはっきりと反対を表明し、新聞などにも文章を載せただけあって、そのへんの事情説明などは登場人物のせりふや話の展開にいきてくる。特に最終章では彼の現在の世界認識がクールに示される。もちろん安手のプロパガンダにはなっていない。シニカルに感じられるくらい、クールで客観的だ。これがフィクションで語られるところがル・カレだ。

 

 ハイデルベルクで英語学校を倒産させ、借金にも追われている英国人テッド・マンディはドイツで英語のツァー・ガイドをして生活している。トルコ人の愛人とその連れ子もいる。物語は彼の過去へさかのぼる。英国軍人とアイルランド人母の間にパキスタンで生まれた彼は植民地インド、パキスタンで幼少期をすごすがその後、父とともに英国に帰国、パブリックスクールに進学、ドイツ人教師の影響を受け、オックスフォード大学時代ベルリンでアナキスト系の組織に参加、反戦運動を展開する。そのときのリーダーで、ずっと親友になるのがもうひとりの重要登場人物、サーシャだ。テッドはベルリンで逮捕され英国に返される。そこでいくらかの展開があるが、やがて、ドイツ語をいかして英国文化振興会に職を得て、結婚し、一児も儲け、思想的背景を隠したまま普通に生活することになる。だが、そこは冷戦下、まわりが彼のキャラクターと能力を放っておいてくれない。ある事件を通して国家機関に眼を掛けられ、スパイとしてオルグられる。組織的訓練を受けて、何度も東欧にでむき、旧友サーシャとともに2重スパイとして働くことになるのだ。このあたりの話の展開はさすがに面白い。そして冷戦の終結、ベルリンの壁の崩壊ののち、スパイを引退してから、話がツァー・ガイドの彼に戻るわけだ。

 

 ある日、いつものようにガイドをしている彼は久しぶりにサーシャをみつける。2人は現在の世界、イラク戦争などについても語り合い、いまだ続く共感、友情を確信する。サーシャは心酔している人物にテッドを引き会わせる。彼はある新しい活動に参加するようになる。とりあえず破産させた語学学校をその資金で再建することになる。約束どおり資金は振り込まれてくる。だが、どうもわかってはいたが背景が怪しい。テッドにスパイ時代の勘が戻ってくる。昔の仲間に連絡を取り、色々確かめようとするが、米大資本の傭兵と化した組織の動きは早かった。サーシャともども罠にかかってしまう。エンディングはすさまじいアクションとクールな後処理。現在の世界、マスコミなどへの痛烈な皮肉で終わる。これから読む人もいるのでこれ以上書かない。

 

 重厚で、かつスリリング、かわらぬル・カレ節。ファンにはたまらない、至福の読書である。

 

 僕は高村薫がル・カレの影響をすごく受けていると思ってきたが、今回またその感を強くした。ただ、ル・カレのほうが少し「老い」てきたように思う。大作家に対して失礼。それから翻訳文はちょっと読みにくい。まあ仕方ない。悔しかったら原文で読めということか。

 

 

 「革命のライオン」・「バスティーユの陥落」 佐藤賢一

 佐藤賢一の歴史小説はどれも面白い。また、新書版で読んだ「英仏百年戦争」では、百年戦争が実は英・仏の戦いではなくフランス人同士の戦いであったことが面々と書いてあって眼を開かれる思いだった。

 その佐藤賢一がライフワークとしてフランス革命を描く。面白くないはずがない。現在この2巻だが、10巻完結は2012年春の予定だ。ずっと楽しんでいけるわけである。

 

 物語は、ネッケルの登場、全国3部会の招集からはじまる。そして第一巻の主役はミラボー、この人物描写が卓抜だ。豪快で、「空気を読む」政治家である。貴族でありながら第3身分から議席を得て、3部会、国民議会、憲法制定議会とかわっていく中での彼のリーダーシップが描かれる。また、ロベスピールを子分としてはべらせ、パリの民衆蜂起の実態をみ、デムーランをアジってリーダーに仕立て上げたりする。7月14日のバスティーユ攻撃、その前の攻防などはデムーランの視点から描かれてゆく。

  

 この2巻全編はミラボーとロベスピエールを軸に展開する。革命史でおなじみの人物たちが活き活きと描かれ、これまでの佐藤賢一の小説がそうであったように愉快に一気に読み進める。背景には大変な取材と資料調査、努力があったのだろうが、そこを軽々と流れるような文章で読ませてくれる。さすがである。

 この先、10巻までの4年間が本当に楽しみだ。

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